社員紹介
INTERVIEW
「畑違い」の経験が糧になる。
経験を活かせている実感がある。
2020年入社で、現在はモビリティ事業推進部部長を務める西邑は、鉄道やバスに興味があったわけではないという。しかも前職は「半導体メーカーの研究職」と、小湊鐵道とは縁遠い世界にいた人物だ。そんな西邑が「畑違い」の世界に飛び込み、活躍できている理由は「『畑違い』の経験を糧にできているから」という。その真意を語ってもらった。
西邑雄一
小湊鐵道株式会社
モビリティ事業推進部 部長
半導体製造とダイヤ編成は「生み出す」ことで共通している。
前職は、全く畑の違う業界で働いておられたそうですね。
半導体メーカーで働いていました。しかも研究職ですよ。業界の畑も違えば、職種としても全く違いますよね。
何がどうして、どうなって、小湊鐵道にたどり着いたのでしょう。
早期退職に応募して、家族との時間がきちんと取れるよう、現在の地元から距離的に近くて、出張がないと思われる企業を探していたら、たどり着きました。
それだけ聞くと、なんだか理想的な転職のように聞こえます。
理想的と言えば、確かに理想的だと感じていますね。前職では海外出張がとても多かったし、関西の方へ長く単身赴任していたこともあって、家族には迷惑をかけたという後ろめたさもありましたから。
それにしても畑違いも度が過ぎますよね。実は鉄道がお好きとか?
それが全く(笑)。前職は国内出張も多かったですが、むしろ電車に乗るのは嫌いだったくらいです。
小湊鐵道と接点を持ったきっかけは何だったのでしょうか。
ハローワークの求人票で見つけました。縁故でもないし、紹介でもない。ある意味、劇的ですよね?
自分で言っちゃいますか(笑)。
でも、この方が夢がありませんか? ごく普通にハローワークで見つけて入社した会社で、相応の責任ある役職をいただけて、こんなインタビューに登場して、なんて。だけど正直な話をすると、早期退職で退職金を多めにもらうことはできたものの、畑の違う世界に飛び込むのは不安がありました。最悪の場合は、妻の実家が水道屋さんをやっていますから、そこで働かせてもらおうかな、とも考えていましたよ。とにかく家族のいる千葉で働きたい、という想いだけは強かったですね。
どんな職種で募集が出ていたんでしょうか。
「事務職」でしたね。営業職や販売職だったら自信はありませんでしたが、事務系の仕事であれば、これまでの経験を活かしてできるんじゃないかと思いました。
「事務職」と「研究職」では、ずいぶんと違う印象もありますが。
職種名だけを比べると、確かに大きな違いがあるように感じるでしょうが、私としては半導体という製品をつくることと、今のバスの運行ダイヤ編成を手がけることは「生み出す」という点で共通するものがあると思っています。
「100年続くベンチャー企業」と呼ばれるには、理由がある。
失礼ながら、ちょっとこじつけのようにも感じてしまったのですが(笑)。
そうですよね(笑)。でも、きっとご存じないと思うのですが、「バスの運行ダイヤ編成」って、すごくたくさんの人が関わって成り立つ仕事なんですよね。
どれくらい、たくさんの人が関わるのでしょう。
第一に、バスをご利用いただくお客様がいらっしゃいますよね。例えば、とある路線が私たちにとって採算が厳しくて、減便の検討を始めたとします。すると当然ながら、ふだんからその路線をご利用いただいているお客様には、不便をかけることになる。まずはそんなお客様に、減便になったらどれくらい不便になるかをお聞きします。承ったご意見の内容によって、同業他社様に共同運行を持ちかけて減便にならないように交渉をしてみたり、その計画を実現するために国や自治体と交渉や折衝をしたり。いろいろな立場の方々と接して、みなさんが納得できるような着地点に到達できるよう努力を重ねます。
お聞きしているだけで、大変そうなお仕事ですね。
大変と思えば大変ですが、一方で新しい路線を開設することもあるんです。例えば高速バスの新路線開設などは、実際に開通した後にバス停に並んでいるお客様が大勢いらっしゃったりすると「よかった」「嬉しい」という気持ちが爆発します。お客様に「何でこのバス路線をお知りになりましたか?」などと質問をさせていただいて「自治体の案内から」とか「小湊のホームページで」とか、いろんなきっかけがあって並んでいただいているというお話を聞くと、心の底から喜びの感情が湧き上がってきますね。
こうやってお聞きすると「バスの運行ダイヤ編成」のお仕事は確かに「生み出す」感じがありますね。
だけど、最初はいろいろと戸惑いましたよ。入社前には「バスが時間通りに来るのは当たり前」ぐらいに思っていたのに、定時運行をするためにはこんなにもいろんな人たちの支えがないと実現できないことなんだ、と驚きました。そもそも小湊鐵道はその名の通り、鉄道の会社というイメージが強かったけど、実はバス事業のウエイトが大きいことを入社して初めて知ったのも驚きでした。それにダイヤ編成するのはバスですが、小湊の中には鉄道もタクシーも事業としてあるし、なんならゴルフ関連の事業や不動産事業などもある。それぞれの事業を組み合わせて、いわゆる「シナジー(相乗)効果」を生み出すこともできると考えると、いろんな可能性が広がるなと思います。たくさんの人が関わってモノづくりをするのは前職の半導体製造でもそうでしたが、つくるものは半導体一択だったので、転職してきてよかったとつくづく思います。
なるほど。その可能性の広がりこそが「100年続くベンチャー企業」と呼ばれる所以なんですね。
100年続いた企業って、どこか硬直化しているように思うじゃないですか。それが小湊鐵道という会社は、むしろアメーバのようにふにゃふにゃとしている。「ふにゃふにゃ」というと言葉が悪い気がしますが、柔軟性があると捉えていただければと思います。
小湊鐵道の「ふにゃふにゃ」なところを、具体的にお聞きしたいです。
わかりやすく言えば「決断が早い」ことですね。前職の時は、何か新しいことを始めようとすると稟議や決裁に時間がかかって、本格的なスタートまで数カ月かかるなんてことが普通にありました。ところが小湊鐵道では、何かを始めようとすれば、晋平社長や卓生副社長に直接相談して、二人が「やろう」となればすぐスタートできる。もちろん何でもかんでも「やろう」とはなりませんが、二人に「やろう」と言わせるための準備をするためにいろいろ考えるし、それが結果として自分にとって勉強にもなっています。それと、社員全員に社用のスマホが貸与されていることにも、柔軟性を感じます。
えっ、それって、そんなに珍しいことなんですか?
少なくとも前職の会社では、取締役以上の上層部にしか貸与されていませんでしたよ。小湊鐵道では全員に貸与されていて、そのスマホには業務用チャットサービスのアプリがインストールされている。そのアプリを使って、晋平社長や卓生副社長も含めて全員がコミュニケーションを取れるようになっていますから、本当に話が早い。私はふだん、バス事業の核となる塩田営業所にいて本社から離れていますが、このアプリのおかげで距離を感じることなく仕事ができています。
「ハードル」を越えるのは難しいが「生み出す」楽しさがある。
確かに「100年続く」企業なのに、どこか「新しさ」を感じますね。
昔は社内にも「しがらみ」のようなものはあったと、社歴の長い先輩たちから聞きますけどね。私は2020年入社で、晋平社長と卓生副社長のツートップ体制が始まった頃から、コロナ禍の真っ只中を過ごしてきました。その間、巷の会社ではリストラが行われているのに、小湊鐵道ではそんなことは一切考えなかったし、むしろ「バスの新路線を開設しよう」などと「今、やるの?」と思うようなチャレンジもあるほどで、先輩たちの言う「しがらみ」は感じたことがないですね。
もしかすると「100年続く企業」は変化と進化を続けているから、100年続くのかもしれませんね。
確かにそうですね。でも一方で「しがらみ」ではないですが、鉄道やバスという沿線のみなさんの生活インフラを担う「公共性」の高い事業を手がける会社だからこそ感じる、ハードルのようなものはありますね。
その「ハードル」とは、どんなものでしょう。
先にお伝えしたような、不採算のバス路線をどうするかといったケースでは、ハードルを感じることがあります。廃止を検討していると言えば、自治体や地域住民の方々からの「なぜ?」に応えないといけません。「通学する子どもたちが困る」とか「病院にはどうやって行けばいい」とか、いろいろなご意見を承る。バスは「公共性」の高い、生活インフラを担う事業ですから、不採算だからといって簡単に廃止するわけにはいきません。例えば「通学する子どもたちはこの時間帯に多く乗るし、病院に通院される方はこの時間帯に多く乗られるから、この2便を1便にしたらどうだろう」とか「同業他社に共同運行でバスを走らせてもらえないか」とか、いろいろなアイデアを考えます。こうしてハードルを越えて、みんながいいようにできる道を模索するのは、大変ではありますがやりがいもあります。
そんな大変なお仕事を、がんばれる理由は何ですか。
やっぱり「生み出す」楽しさがあるからでしょうね。前職の半導体メーカーでもそうでしたが、娘に「これ、お父さんがつくったんだよ」と言えるものがあるのは嬉しいですよね。小湊鐵道には自分が企画して開設されたバス路線があって、時には路線バスの旅のようなテレビ番組で紹介されたりもする。テレビやネットのニュースなどで「インバウンドが回復してきて、乗客数が増えている」などと紹介されたこともありますが、そういうのを見ると「おお!」となりますよね。半導体をつくっていた頃は、娘に「この家電の中に入っているのを、お父さんがつくっているんだよ」と言ったら「しょーもな!」と一蹴されたりしましたが(笑)、今は「今、テレビで紹介されているバスの運転手さん、お父さんの友だちなんだよ」と言うと「へええ」と感心してくれます(笑)。
これまでの経験を糧にできる人なら、小湊鐵道で活躍できると思う。
「全くの畑違い」に転職したご自身の経験を踏まえ、どんな人が小湊鐵道で活躍できるとお考えですか。
私がそうでしたから、少なくとも鉄道やバスが好きである必要は全くない(笑)。何しろ小湊鐵道に入社するまでは、電車に乗って出張することすら、あまり好きではなかったですし、小湊鐵道の存在すらあやふやな印象しかなかったくらいですからね。では自分がなぜ小湊鐵道に適応できているかを考えてみると、前職でいろいろな経験をしてきたからかなと思います。
「いろいろな経験」を、具体的にお聞きしたいです。
前職では「研究職」だったとお伝えしましたが、任された業務の中にはいわゆる「生産技術」と呼ばれる、モノづくりのための設備や環境を整えるための企画、と言えるようなものもありました。「自分は研究職だから、こんなことはできない」とはならず、職種の枠を超えていろいろな業務に挑戦できた経験は、今に活きていると思います。それに前職では、業界の大手企業同士の合併も経験しており、二つの企業の文化を肌で感じることもできた。自分が意図しないことでも、経験できたことを糧にして、次に活かそうという気持ちで仕事に臨めたら、きっと小湊鐵道でも活躍できるのではないでしょうか。
そんな「小湊鐵道で活躍できる人」に、小湊鐵道が用意できるものは何だと思われますか。
晋平社長と卓生副社長のツートップをはじめとして、全員が「一緒により良い会社にしていこう」と同じベクトルを向き、職種や立場に関係なくフラットに意見を交換できる環境ですね。先に述べたように、業務用チャットサービスのアプリでは、誰でも晋平社長や卓生副社長に意見が言えます。おかげで情報がフルオープンになって、人によって言うことが違うとか、方針がブレるといったことが全くありません。そんなふうに一般社員も参加して、明るい会社の未来をつくっていこうという気概のある企業って、そんなに多くはないのではないでしょうか。
では最後に、これから小湊鐵道で一緒に働くかもしれない人たちに向けて、メッセージをお願いします。
小湊鐵道に限らず、地方のローカル鉄道を取り巻く環境は、少子高齢化の加速や沿線地域の過疎化など、明るい材料は決して多くはありません。しかしそんな中でも小湊鐵道はコロナ禍を経ても黒字経営を続けているし、これから先の100年、どうやって会社を存続させていくか、みんなで考え行動していく土壌ができていると思います。運転士をはじめ、小湊鐵道を支える人たちの給与・待遇は決して「恵まれている」とは言えません。だけど「どうやったらみんなの給与・待遇が良くなるか一緒に考えよう」と、ツートップから私たちに発信してくれている。これから先の小湊鐵道の100年をつくり上げていく、というダイナミックな仕事に魅力を感じ、挑戦しようと思う人に出逢いたいですね。
今日は長い時間、どうもありがとうございました。
(インタビュアー)
高藤悠子 プロビティ・グローバルサーチ株式会社 代表取締役
慶大卒。新卒でメーカーへ入社後、人材紹介会社へ転職。外資・IT大手などを担当し、若手からエグゼクティブまで幅広い人材の紹介業務に従事。その後、JACリクルートメントのタイ現地法人へ転職し、執行役員としてスタートアップに対応。2012年の帰国を機にプロビティ・グローバルサーチを設立、現職に就任。現在に至る。